先日、東京は蒲田で開催中の『特撮のDNA 〜平成ガメラの衝撃と奇想の大映特撮』に行ってきました。
いわゆる『平成ガメラ』と呼ばれる4作品で撮影に使用されたスーツなどの展示を中心とした企画展。
終了が1週間後に迫る中、やはり諦めきれず、急遽平日に仕事を休んで行ってきました。突然「明日仕事休んで東京行ってくる。ガメラのスーツが見たいんだ。」なんて言ったのに快く送り出してくれた妻には感謝しかありません。こういう時ばかりは都内住みの方が羨ましい…。平日ということもあってか来場者もそれほど多くなく、じっくり観ることができました。
平成ガメラ、特に『大怪獣空中決戦』『レギオン襲来』『邪神覚醒』からなる『平成ガメラ3部作』と呼ばれるシリーズは個人的に非常に印象深い作品。
最初に僕を特撮沼に引きずり込んだのは、特撮映画としては9歳のときに初めて劇場で観た『ゴジラVSビオランテ』でしたが、さらに抜け出せない沼の深い深い所まで落としたのがこの『平成ガメラ3部作』。このシリーズがなかったら今ほど特撮に傾倒していなかったかもしれません。当時『大怪獣空中決戦』スクリーンから「特撮映画はまだまだ進化の余地があり、面白くなるぞ!」というメッセージを受け取った気がするからこそ、今でも特撮映画と聞けば劇場に足を運んでいるのです。実際に平成ガメラ3部作の後は特撮映画の表現の幅は大きく広がり、以前より多様性のあるジャンルに進化したと思っています。
そんな特撮映画のマスターピースとも言えるシリーズを中心に据えた企画展だったわけですが、いやはや、非常に素晴らしかったです。
以前に『特撮博物館』というバケモノみたいな企画展を見てしまっているので点数こそ少なく感じてしまいますが、展示物は超充実。実際の撮影に使われたものや絵コンテなどはもちろん、「CGシーン作成用に作ったイメージジオラマ」みたいなものまで展示されていました。個人的には平成ガメラの中で最も印象深い『炭化ガメラ』を拝めたのが嬉しかった。4作品分の展示に絞ったことで1作品ごとにしっかりとスペースが確保されていて、それぞれの世界観にどっぷり浸かることができました。
展示物をもの凄く間近で見られるのも良かった。もちろんだいたいのものはガラスケースに入っているのですが、ケースに入れられないような大型のスーツと来場者を仕切るのはひく〜い柵とも言えないような鉄パイプのみ。触れるか触れないかのギリギリの所まで顔を寄せて見ることができるので、細部の作りや質感までじっくり楽しめました。ソルジャーレギオンの角についてる毛なんかこの距離感がないと気が付かん。主催者と来場者の信頼関係があってのことだと思うので、今後も事故などないことを祈っております。
展示の仕方も非常に丁寧。似たような展示物、例えばどの作品でも共通で展示されていたガメラの頭部なんかは展示方法がほとんど同じなので、比較しやすく、違いが分かりやすい。それが作品ごとに異なる敵怪獣や小物にも反映されていて、例えばギャオスとレギオンとイリスの爪(イリスは触手の先端ですが)が同じように展示されている。通常の展覧会は学芸員さんが考えているのでしょうが、こういうのはどなたがやってるんでしょうか?考える方、すごいです。
展示物に付けられた解説は制作時のエピソードか多く、興味深く読ませていただきました。短いながら物足りなさもなく、ポイントを抑えた文章で読みやすかったです。
で、この企画展最大の特徴は、自由に写真が撮れること。持参したカメラやスマホで好きなだけ撮り放題です。先述のとおりスーツなどはかなり間近で見られるので超接写が可能。図録を購入する方は図録になさそうなアングルで撮っておくのも一興です。ひとりでGⅢガメラを撮ってたらスタッフの方が「一緒に撮りましょうか?」と声をかけてくださったので、ガメラとのツーショットを撮っていただいちゃいました。
そんなこんなで展示物を舐め回すように見て写真を撮りまくって約1時間半、会場のいちばん奥に待ち構えていたのは映像コーナー。脚本家の伊藤和典さんを始めとしたクリエイター6名が作品制作時のエピソードや特撮映画への想いを語る約2時間の映像。こちらもしっかりと観て、合計数時間の楽しい時間を過ごさせていただきました。
というわけで『特撮のDNA 〜平成ガメラの衝撃と奇想の大映特撮』の感想でした。同じスーツなどを展示するような企画展でもコンセプトは様々ですが、今回のような制作時のエピソードや技術的な側面をテーマにしたものは特に面白く感じます。
映像展示の中で造形師の村瀬継蔵さんが「CGなどの映像表現が一般的になってきた今でも、子どもたちが馴染めるのは昔ながらの特撮ではないか(要約)」とおっしゃっていました。
現代の子どもたちはスマホやタブレットの普及で、手持ちのおもちゃや自分達の演技で手軽に映像作品が作れる世代です。実際に我が家の息子たちもiPadでおもちゃ遊びを撮って遊んだりしています。そういった状況の中では、表現手段としては1からの学習が必要なCGよりも、閃きや工作で創作できる「昔ながらの特撮」が身近と言えるかもしれません。来場した少年少女に文字通り「特撮のDNA」が受け継がれて、末永く特撮映画が創り続けられることを願ってやみません。
さて次回は2020年7月、山梨でゴジラがテーマとのこと。更に遠方になるのでどうやって行こうか、今から考えておかないとな…
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